ちゃりちゃり!

ちゃりちゃり!世の中に漂うモヤモヤした悩みの種を、一刀両断徹底解説!総合ニュースサイト

IT・テクノロジー 政治・経済

フィンテックが金融機関であまり真面目に浸透しない理由

fintech

やいのやいの「これからはフィンテックだ!」と業界では騒がれているが...

フィンテックという言葉は、文字通りバズワードになりました。2016年以降の数年間は「流行語大賞」顔負けの「業界流行語」になることは確実です。

おそらくネットの検索窓から本記事をお探しになられた方には「釈迦に説法」でしょうが、もう一度おさらいとしてフィンテックについて簡単にお話したいと思います。

フィンテックとは、ローマ字でかけばFintech、即ち「Finance(金融) + Technology(テクノロジー)」の略称です。

ただしこの際のテクノロジーとは、「ITを用いた高度なテクノロジー」のことを指しますから、「金融工学」や「金融のネットバンキング」といった次元のことではありません。

かつては銀行がネット決済に踏み切る時にも「金融とテクノロジー」の融合といった言葉が使われたこともありましたが、これは10年以上前の話です。

これからの日本、そして世界で起こる「フィンテック」とは、「金融機関の存在自体も揺るがしかねない、高度ITによる業界構造の再編ビッグバン」ともいえる一大イベントなのです。

少し言い方が難しくなりましたが、要は

「ロボットや人工知能などで、ただの銀行営業マンや窓口テラー姉ちゃん、融資後方事務などの単純銀行労働がなくなる」

「銀行にアナログに金を預けなくなり、銀行を使う人が減る」

など、「銀行労働者にとってはマイナスに働く」ことをもたらすんです、フィンテックは。

フィンテックについてやいのやいの騒いでいるのは、実際には「労働力の合理化」を推し進めたい銀行経営陣たちなのです。

ただし、このフィンテックの議論が銀行業界ではあっちやこっちやと想定されない方向に流れていっているのが現状。今回はその理由について詳しく見ていきたいと思います。

フィンテックの担い手であるベンチャーと銀行とで、温度差が激しすぎる

最近では大手メガバンクが、国内の複数のフィンテックベンチャー企業と手を組み始めました。

大手銀行にはフィンテック専門の担当部署が既に設けられており、ITに詳しい専門家達をヘッドハンティングして配置しています。いわゆる赤バンク、緑バンク、青バンクともに、かなり危機感を持って取り組んでいるのが分かります。

問題は地方銀行や信用金庫、信用組合や信連関係。

彼らも一様に「これからはフィンテックだ!」と叫んで入るものの、具体的な動きをほとんど見せないのです。

一部の地銀ではベンチャー連携を行って入るものの、ベンチャーたちがその温度差の激しさに憤っているのが現状だとか。

温度差とは一体何か?

そう、「スピード感覚」です。

銀行の本部業務というのは、基本的に「超のんびり」です。そもそも今の銀行のビジネスモデルは、50年前からほとんど変わっていない。

そもそも銀行には「膨大な預金量」がありますので、極端な話、その預金量を食いつぶすだけでも、向こう数十年は従業員に給料を支払い続けることができる。

ここが、「売上高と利益最優先」の民間企業との一番の違いです。

銀行側としては現在のビジネスモデルでも何とかなると考えており、そもそも膨大な預金量を「運用」するだけでも、運用対象が株式や外債系であれば従業員分の給料程度は利益を得ることができてしまいます。

このように、銀行には切迫感があまりなく、ベンチャーが「スピード重視」で決済・融資などの各種システム化向上策を提示しても、銀行側は至ってのんびりとその提案を審議するのです。

今までIT系ベンチャーというのは、IT企業同士でのビジネスが中心でした。大企業との取引であっても、基本相手は株式会社の民間企業。即ち今まで「銀行」と関わったことがなく、まさかここまでスピードが遅いとは思いもよらなかったというわけです。

一方で銀行側としても、IT企業のあまりのスピード感にたじたじ状態。銀行は何事も「減点法」で「慎重に」事を進めていく傾向にありますので、新しいことをバンバンと提示されても困り果てるばかり。

そもそも銀行は、IT企業のみならず民間企業とタイアップで何か新規事業を行うという機会が、今の今までほとんどありませんでした。そういう意味で、IT企業は、はじめて眠れる獅子として謎が多かった銀行に風穴を開けた「第一人者」ということになります。

いずれにせよ、スピード感覚の温度差ゆえに、フィンテックが加速度的に進まないのはかなりの致命傷といえます。

そもそも金融機関側にフィンテックの建設的アイデアがない

実はフィンテックが銀行で進まない最大の要因はここにあります。

フィンテックは、銀行の業界団体である全国銀行協会や金融庁、地方財務局などの号令で始まった感があり、そもそもITとは一切無縁だった頭取をはじめとした銀行経営幹部達は、何をしていいかよく分かっていないのです。

何から手をつけるべきなのか?どのようにフィンテックを利用すれば銀行の利益につながるのか?

そこで一番頭を使わなくてよい安易な思考に、人々は走ってしまうのです。

そう、「人件費削減にフィンテックを使えばいいんだ!」ということ。

尤も、フィンテックの脅威は、労働力がロボットとAIに代替されるところにも見出されるのは事実です。

冒頭でもお話しましたように、今後銀行営業はかなり減少すると見られています。特に個人向け営業(定期預金、定期積金、投資信託などの個人宅向け営業)は利益自体非常に少なく、労働投下量に見合う「うまみ」が年々見出されなくなってきています。

これら個人向け営業は銀行のみならず、証券や生保などでも同様のことがいえます。証券はネット証券、生保もネット生保で行うほうが、「人件費」がかからないためコストが浮く。特に生保といえば生保レディが有名ですが、これも数年以内に消滅する可能性が叫ばれています。

全てネットで完結する業務スタイルか、人力で一軒一軒ピンポンして営業アタックするスタイルか、どちらが粗利益が高いかは自ずと分かりますね。

現状、銀行・証券・生保ともに、ドブ板営業系はネット系に価格面で勝つことはほぼ不可能です。現在のドブ板営業は最終段階です。すなわち「土下座営業」なのです。ネットで買ったほうが安くてお得だけれども、家まで来てくれた担当者への「慈悲心と人情」で成り立っている場合が多い。

これを銀行の話に置き換えれば、地銀や各種地域金融機関ではその傾向が非常に強いことが分かります。

しかし地域金融機関レベルであれ、フィンテックを使うことで「その地域限定でのネット金融商品販売」が可能になる。現在のネット銀行やネット証券、ネット生保は東京の新興企業系が多いですが、これらと同じ業務が「地方ごと」に実施できるようになるのです。

そうなれば必然的に、「営業」が不要になる。

「ピンポン外回り」営業と同様に、「店内営業」の看板である「窓口テラー姉ちゃん」という看板娘たちも、切られていく可能性が高まります。彼女たちの存在も、いわば「慈悲心と人情」で成り立っているもの。話をたくさん聞いてくれたから買ってあげる、というような具合です。

しかしこのような「人情のみに訴えかけるセールス」は、先進国ではもはや不可能になりつつあります。恐ろしいまでの「価格競争」に見まわれた日本においては、テラーの方々も全てペッパーに代わる可能性があるのです。

話が随分と大きくなってしまいましたが、結局、銀行の経営陣サイドには「人件費カット」というマイナスの思考以外に発想がないのが現状。もちろん銀行の人件費はどこでもネックです。

地銀以下の金融機関においては、全体の経費の6割強以上が人件費として消えていくのが普通。リストラが難しい業界でもあるので、フィンテック旋風はまさに「ひと粒で二度美味しい」願ってもない機会だったのです。

「みんながやるからフィンテックをやる」のでは未来がない

フィンテック旋風は全国津々浦々の銀行、信金などで巻き起こっています。しかしタイトル通り、「他行がやってるし、業界からの号令もあるから仕方なくやるか」という程度の感覚で、のんびりとスタートしているのが現状。

しかしぼーっとしている間に、地方の金融機関の存在自体が一瞬で吹き飛ぶこともありうるのです。

今まで金融機関は、法規制で守られ続けてきました。これだけグローバル化して資本主義が発達した世の中であれ、地域金融機関では今でも「一株一票制」ではなく「一人一票制」が取られている。

これは即ち、「資本を持っている人が偉い」のではなく「出資者全員が平等に評価される」仕組みであり、グローバル経済下では非常に問題のあるシステムです。それでも、法律で守られてきたため、今日までのほほんと暮らすことができた。

「フィンテック みんながやるから 俺たちも」

最後にこんな悲しい川柳を残して締めるのは何とも切ないものです。

現状のこの価値観を変革させ、少しでも自行の未来のためにフィンテックをどのようにプラスに活用すべきか?についての議論が為されないかぎり、ある日突然、フィンテックの風に存在自体が「まるごと取って替わられる」時が来てもおかしくない。

この恐ろしいまでに弱肉強食が浸透する現代のテクノロジーの進歩を、ひとりひとりが切に意識する必要があります。

 

-IT・テクノロジー, 政治・経済